「準委任契約だけど、検収したい」――どうすればいい?
更新日:9月29日
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①まずは「請負契約にしろ。」と言いたいところですが
業務委託契約書を作っていると、こんな悩みに出会うことがあります。
「請負契約ではなく、準委任契約にしたいです。でも、業務をちゃんとやってもらえたかは確認したい。できれば、不十分なところは対応してもらいたい。」
さて、どうしましょう。
私ならまず、
「請負契約にしろ。」
と言います。
……身も蓋もありません。笑
でも、ちょっと考えてみてください。
完成したものを確認したい
契約で決めた内容になっているか確認したい
不備があれば対応してほしい
その結果に応じて報酬を支払いたい
という契約であれば、
「それ、請負契約でいいんじゃない?」
と考えてみる余地はあります。
無理に「準委任+検収」という複雑な仕組みにするより、請負として整理した方が分かりやすいケースもあるでしょう。
②でも、「それができないから困ってるんだよ!」
……はい。
おっしゃるとおりです。笑
「請負にできるなら、最初から請負にしてるよ」
という方もいるでしょう。
特にシステム開発などでは、そう簡単にはいかないことがあります。
例えばアジャイル型の開発では、契約を締結する段階で、
「最終的にどんなものが完成するのか、誰にも完全には分からない」
ということがあります。
開発を進めながら、
「この機能はこっちの方がいい」
「この仕様は変更しよう」
「この機能を追加しよう」
と調整していく。
こうした業務について、
「契約締結時に決めたこの成果物を完成させること」
を契約上の中心に据えると、実際の業務の進め方と合わなくなることがあります。
そこで、
「仕事の完成を契約上の中心とする請負ではなく、業務を遂行してもらう形にしたい」
という発想が出てきます。
ただし、
「だから、業務の内容を確認する必要もない」
ということではありません。
ここからが今回の本題です。
③「準委任だから検収できない」わけではない
まず、ここは誤解しないようにしたいところです。
「準委任契約なのだから、検収というものを設けてはいけない」
という単純な話ではありません。
準委任については、委任に関する規定が準用されます。
委任では、受任者は善良な管理者の注意をもって、委任の本旨に従って事務を処理する義務を負います。また、委任者から請求された場合には、事務処理の状況を報告することも定められています。
つまり、準委任だからといって、
「受託者が何をやっているのか、委託者は確認してはいけません」
ということではありません。
むしろ、
「契約で予定していた業務が実際に行われているか」
を確認する仕組みを契約書に設けることは、十分考えられます。
④では、「検収」では何を確認するのか?
ここが重要です。
「検収」という言葉を使うこと自体よりも、
その検収によって何を確認するのか
を考える必要があります。
例えば、
1. 業務を実施したか
「今月予定していた業務を実施したか」
2. 業務の内容を確認する
「契約で定めた業務内容に沿って処理されているか」
3. 報告内容を確認する
「実施した業務について、必要な報告がされているか」
4. 成果として提出されたものを確認する
「依頼したレポートや資料等が提出されているか」
など、確認の対象はいろいろあります。
したがって、
「検収=成果物の完成を確認するもの」
と決めつける必要はありません。
⑤「不十分だったら修正してほしい」はどうする?
ここも実務上は気になるところです。
例えば、
「契約ではA・B・Cの業務を行うことになっているのに、実際にはA・Bしか行われていない」
という場合。
あるいは、
「契約上予定されていた内容とは異なる方法で業務が処理されている」
という場合。
このようなときに、
「契約で定めた内容に沿って対応してください」
と求める場面は当然考えられます。
ただし、ここで注意したいのは、
「準委任でも修正請求できるから、請負と同じ」
という話ではないことです。
請負では、仕事の結果が契約内容に適合しない場合について、民法634条などに一定のルールがあります。
一方、準委任の場合には、
そもそも受託者が契約上どのような業務を行う義務を負っていたのか
というところが重要になります。
したがって、契約書で「修正」という言葉を使うのであれば、
何を修正するのか
どのような場合に修正するのか
いつまでに対応するのか
追加費用が発生するのか
などをできるだけ明確にしておいた方がよいでしょう。
⑥「準委任だから、仕事が不十分なら減額」は要注意
ここは特に注意したいところです。
例えば、
「月額10万円で契約したけど、予定していた仕事の9割しかやっていない。だから9万円ね。」
と単純に考えてよいわけではありません。
例えば、
1件1万円 × 実施件数
という報酬体系なら、9件実施した場合に9万円となることは契約上説明しやすいでしょう。
一方、月額10万円
という定額報酬だけが定められている場合、
「9割しか仕事をしていないから、当然に9万円」
とは限りません。
報酬についてどのような契約をしているのかを確認する必要があります。
また、民法648条3項には、一定の場合に「既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる」というルールがあります。
ただし、これも、
「準委任なら、仕事を9割やったら9割の報酬になる」
という一般的なルールではありません。
「減額できるか」という問題と、
「そもそも報酬がどのように定められているのか」
という問題は、分けて考える必要があります。
ちなみに、準委任契約には「成果に対して報酬を支払う」というタイプもあります。
「それって請負と何が違うの?」という話が出てきそうですが……ここはちょっと話が長くなるので、今回はいったん置いておきます(笑)。
このあたりは、別の記事で改めて掘ってみたいと思います。
⑦「成果物がある=請負」ではない
ここまでの話を整理すると、
成果物がある契約=請負契約
と単純に考えることはできません。
例えば、準委任として業務を行った結果、
レポート
設計書
分析資料
その他の成果物
が生じることはあり得ます。
また、その成果に対して報酬を支払う契約も法律上想定されています。
したがって、
「成果物があるから請負」
とは言えません。
⑧「検収がある=請負」でもない
同じように、
「検収」という言葉が契約書に入っているから請負
とも言えません。
大切なのは、
その検収によって何を確認するのか。
そして、
検収の結果に、どのような契約上・法的な効果を持たせるのか。
です。
例えば、
「業務が実施されたことを確認する」
という意味での確認と、
「契約上予定された成果が完成したことを確認する」
という意味での検収では、契約上の意味合いが大きく異なります。
だからこそ、「検収」という単語だけを見て判断するのではなく、契約全体を見る必要があります。
⑨では、準委任+確認を設計するとき、何を考えればいい?
実務上は、次のような順番で考えてみると整理しやすいでしょう。
1.何を業務として委託するのか
まずは業務内容をできるだけ具体的にします。
↓
2. 何を確認するのか
業務の実施状況なのか。
報告内容なのか。
成果物なのか。
↓
3.不十分だった場合に何を求めるのか
再実施なのか。
修正なのか。
追加対応なのか。
↓
4. その対応は、契約上どのような義務なのか
「気に入らなかったらやり直してください」ではなく、
「そもそも受託者は契約上、何を約束していたのか」
を確認します。
↓
5.報酬は何に対して発生するのか
業務を行ったことに対する報酬なのか。
一定期間の業務に対する報酬なのか。
成果に対する報酬なのか。
あるいは、業務量に応じて変動する報酬なのか。
ここを曖昧にしないことが重要です。
⑩それでも「請負契約にしろ。」なのか?
ここで冒頭に戻ります。
「請負契約にしろ。」
これは半分冗談ですが、半分本気です。笑
もし、
「この成果物を完成させてください」
「完成したものを検収します」
「不備があれば対応してください」
「完成したものに対して報酬を支払います」
という契約なのであれば、
一度、請負として整理できないかを考えてみる価値はあります。
その方が契約関係をシンプルにできる場合もあります。
⑪でも、請負にできない場合もある
一方で、
「契約時点では完成形を決められない」
「業務を進めながら内容を調整する」
「最終的な成果を固定するより、継続的に業務を遂行してもらいたい」
という場合には、請負として整理することが実態に合わないこともあります。
その場合、
「請負にすればいいじゃん」
で終わらせることもできません。
そこで、
「では、準委任として、何を業務上の義務とし、何を確認し、その確認にどのような意味を持たせるのか」
を考えることになります。
⑫まとめ――「検収」という言葉に振り回されない
「準委任契約だけど、検収したい。」
この問題について、
「準委任だから検収できない」
と考える必要はありません。
一方で、
「検収条項を入れておけば、請負と同じようなことができる」
という単純な話でもありません。
大切なのは、
何を業務として約束したのか
何を確認するのか
不十分だった場合に何を求めるのか
その対応は契約上どのような義務なのか
報酬は何に対して発生するのか
検収にどのような契約上の効果を持たせるのか
を整理することです。
そして、「準委任+検収」という設計を考えたときには、一度、
「……いや、請負でよくない?」
と考えてみる。
それで解決するなら、それが一番シンプルです。笑
それでも「いや、請負にはできないんだよ!」という場合に、どう契約を設計するか。
そこからが、本当の検討になります。
結局のところ、「準委任で検収できるか」という問いだけで考えるより、「何を確認したいのか」「不十分だった場合にどうするのか」を、契約相手と事前にすり合わせることが大切です。
「準委任だから検収できない」と決めつけるのでもなく、「検収を入れれば請負と同じ」と考えるのでもなく、お互いが何を約束するのかを、契約書にきちんと落とし込む。
それが、結局いちばん大事なのだと思います。
