「契約書をAIに要約してもらった」=「契約書を読んだ」?
最近は、契約書をAIに読み込ませて、「この契約書の内容を要約してください」とお願いすることも珍しくなくなりました。
長い契約書でも、短時間でポイントを整理してくれる。とても便利な使い方だと思います。
では、AIが作った要約を読めば、契約書を読んだことになるのでしょうか。
今回は、契約書の「AIによる要約」について考えてみます。
①AIに契約書を要約してもらう
例えば、10ページある契約書をAIに読み込ませて、
「この契約書の重要なポイントを、分かりやすく要約してください」
とお願いしたとします。
すると、
契約の目的
当事者の義務
報酬
契約期間
秘密保持
契約解除
損害賠償
など、契約書の主要な項目を整理してくれるでしょう。
長い契約書をいきなり読むよりも、全体像を把握するには非常に便利です。
では、ここで一つ考えてみたいことがあります。
「要約されなかった部分」は、無視していいのでしょうか。
②契約書には「要約されにくい部分」もある
契約書の中には、一見すると細かく感じる条件が書かれていることがあります。
例えば、損害賠償について、「相手方に損害が発生した場合には賠償する」とだけ書いてあるとは限りません。
実際には、
どのような場合に責任を負うのか
賠償の範囲はどこまでなのか
上限額は設定されているのか
間接損害は含まれるのか
例外はあるのか
など、細かな条件が続いていることがあります。
解除についても、
「契約を解除できる」
という一文だけではなく、
「どのような場合に解除できるのか」
「催告が必要なのか」
「催告なしで解除できる場合はあるのか」
といった条件が定められていることがあります。
こうした部分は、契約書全体の中では細かな記載に見えるかもしれません。
しかし、実際にトラブルになったときには、その「細かな条件」が問題になることがあります。
③「要約されたものを読んだ」=「契約書を読んだ」ではない
ここで大切なのは、AIの要約が間違っているかどうかだけではありません。
たとえAIが契約書の内容を正確に要約していたとしても、
要約された情報と、契約書に書かれている情報は同じではありません。
要約とは、そもそも情報を減らす作業だからです。
AIに、
「重要なポイントだけ教えてください」
とお願いすれば、当然ながら「重要ではない」と判断された部分は省略されます。
では、その「重要ではない」という判断は、誰にとっても同じなのでしょうか。
例えば、契約を結ぶ前には気にならなかった条項が、実際にトラブルになったときには非常に重要になることがあります。
つまり、
「要約された時点では重要ではなかった情報」が、「後から重要になる」こともある。
ここは、契約書を読むときに意識しておきたいところです。
④そもそも、読まなくていいことが契約書に書いてあるのか?
契約書を読む目的は、「契約書の内容をざっくり知ること」ではありません。
自分が、
何をすることになっているのか
相手は何をすることになっているのか
いくら支払うのか
いつまで契約が続くのか
どんな場合に契約を終了できるのか
問題が起きたときに誰がどこまで責任を負うのか
といったことを確認し、自分がこれから何に同意するのかを理解することにあります。
そう考えると、
「AIが重要なところを要約してくれたから、残りは読まなくてもいい」
とは、必ずしも言えません。
そもそも契約書には、
「読まなくてもいいこと」は基本書いていないからです。
⑤では、AIによる要約は役に立たないのか?
もちろん、そんなことはありません。
むしろ、私はAIによる契約書の要約は、使い方を考えれば便利なものだと思います。
例えば、
「まず全体像を把握する」
「気になる条項を探す」
「難しい文章を別の言葉で説明してもらう」
といった使い方なら、契約書を読むための補助として活用できます。
10ページの契約書をいきなり読むより、
「この契約書には、こういうことが書かれているんだな」
と全体像をつかんでから原文を確認する。
そうすれば、契約書を読むための入口としてAIを使うことができます。
大切なのは、AIの要約を契約書そのものの代わりにしないこと。
そして、要約された内容だけで、自分が契約に同意してよいのかを判断しないこと。
なのではないでしょうか。
⑥契約書は「要約」だけでは終わらない
AIは、契約書を読むための便利な道具になり得ます。
ただし、AIが作った要約は、あくまで「契約書を要約したもの」です。
契約書そのものではありません。
要約された文章を読んで、「なるほど、この契約はこういう内容なんだな」と理解したとしても、
「では、この契約書の内容に同意します」となる前には、原文を確認する。
この一手間は、やはり大切です。
そして、もし読んでいて、
「この条項はどういう意味なんだろう」
「この条件は自分にとって問題ないのだろうか」
と疑問に思うところがあれば、その部分をAIに説明してもらう方法もあります。
それでも判断が難しければ、専門家に確認する。
AIを「契約書を読まなくて済む道具」として使うのではなく、
「契約書を理解するための道具」として使う。
そんな使い方を考えてみてもよいのではないでしょうか。
