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その著作権条項、本当に大丈夫ですか?――「納品されたから自由に使える」とは限りません

  • 執筆者の写真: Yuuki Inoue
    Yuuki Inoue
  • 8月20日
  • 読了時間: 7分

更新日:7 日前

「この成果物、納品されたんだから、うちの会社で自由に使えるんですよね?」

業務委託契約で制作物やコンテンツなどを納品してもらうとき、こんなふうに考えていませんか?

実は、「お金を払って作ってもらった」「成果物を受け取った」ことと、「その成果物に関する著作権を自由に使える」ことは、必ずしも同じではありません。

そして、契約を結ぶときにはあまり気にならなかった著作権の問題が、数年後に突然、大きな問題になることがあります。


今回は、業務委託契約における著作権条項について、少し危機感を持って考えてみたいと思います。


「お金を払って作ってもらったんだから、著作権も自分のもの」ではない


例えば、会社がデザイン会社にロゴを制作してもらったとします。

制作費として50万円を支払い、完成したロゴを納品してもらいました。

会社としては当然、「50万円払ったんだから、このロゴはうちのものだよね」

と思うかもしれません。

しかし、お金を支払ったことだけで、著作権が当然に発注者へ移転するわけではありません。


著作権について何も考えずに契約を結んでしまうと、

「誰が著作権を持っているのか」

「発注者はどこまで自由に利用できるのか」

といった問題が残ることがあります。

特に注意したいのは、成果物を受け取った直後ではなく、その後の使い方を変えたときです。


本当に怖いのは「納品された後」です


例えば、Webサイトの制作を業者に依頼したとします。

無事にサイトが完成し、納品されました。

その後、数年間そのサイトを使い続けてきました。

ところが、会社の方針が変わり、サイトをリニューアルすることになりました。

そこで、別の制作会社に、

「今のサイトのデザインをベースに、リニューアルしてください」

と依頼した。すると、元の制作会社から、

「そのデザインの著作権はこちらにあります。勝手に改変・利用しないでください」

と言われた。


さて、どうしましょう。

発注した会社からすれば、「いやいや、こっちはお金を払って作ってもらったんだけど?」

と言いたくなるでしょう。

しかし、問題は「お金を払ったかどうか」だけではありません。

契約書上、その成果物についてどのような権利関係になっているのか。

ここが重要になります。


「納品されたものを使う」だけなら問題ない?


ここでも注意が必要です。

例えば契約書に、「受託者は成果物を納品し、委託者はこれを利用することができる」

と書かれていたとします。

では、発注者は何をしてもいいのでしょうか。

例えば、

  • デザインを変更する

  • 別の商品に使用する

  • 子会社でも使用する

  • 広告に利用する

  • SNSに掲載する

  • 動画に組み込む

  • 別の制作会社に修正を依頼する

  • サービス終了後も利用する

こうした利用まで当然に認められているでしょうか。

契約書の書き方によっては、「どこまで利用できるのか」が問題になる可能性があります。

だから、著作権条項では、

「著作権を誰が持つのか」だけではなく、「発注者がその成果物をどう使えるのか」まで考える必要があります。


著作権を譲渡しても、それだけで全部終わりではない


では、「それなら著作権を全部発注者に譲渡してもらえばいい」

と思うかもしれません。もちろん、契約によって著作権を譲渡するという方法はあります。

しかし、ここでも確認したいことがあります。

例えば、

「成果物の著作権は委託者に譲渡する」

とだけ書かれていた場合、

  • いつ譲渡されるのか

  • どの権利が譲渡されるのか

  • 既存の素材やプログラムなどはどう扱うのか

  • 著作者人格権についてどうするのか

など、別途考えるべき問題が出てくることがあります。

特に著作者人格権については、著作権を譲渡しただけでは当然に消滅するものではありません。


この点については、以前の記事でも詳しく解説しています。

というテーマで、こちらもぜひ確認してみてください。


もっと怖いのは「第三者から権利を主張された場合」


そして、著作権について考えるときに、もう一つ忘れてはいけないことがあります。

それは、

「そもそも、その成果物を作った受託者は、本当にその著作物を利用できる立場だったのか?」

という問題です。

例えば、制作会社に広告用の画像を作ってもらった。

当然、「制作会社が作ったものだから、問題なく使える」

と思います。ところが後になって、第三者から、

「その画像、私の著作物を無断で利用しています」

と主張された。

発注者としては、「いや、制作会社から納品されたものなんですが……」

となりますよね。

しかし、第三者との関係では、「制作会社からもらったから」というだけで問題が解決するとは限りません。


そこで契約書に、

「成果物が第三者の著作権その他の権利を侵害していないこと」

などについて、受託者から表明保証を受けることがあります。

さらに、

「第三者から権利侵害の主張や請求を受けた場合、誰が対応するのか」

「それによって発注者に損害が生じた場合、誰が負担するのか」

まで定めておけば、発注者側のリスクを抑えることにつながります。

表明保証については、これだけでも一つの記事になるテーマですので、別の記事で詳しく解説したいと思います。


最悪の場合、どうなるの?


ここまで読んで、「まあ、揉めたとしても話し合えばいいんじゃない?」

と思うかもしれません。

もちろん、実際には個々の契約内容や著作物、利用方法などによって結論は変わります。

しかし、著作権侵害が問題になった場合、単なる「契約上の行き違い」では済まない可能性があります。

例えば、権利者から、

「その著作物の利用をやめてください」

と求められる可能性があります。

さらに、一定の要件を満たす場合には、損害賠償を請求される可能性もあります。

Webサイト、広告、動画、パンフレットなど、すでに広く利用している成果物であれば、「じゃあ使うのをやめます」だけでは済まないこともあります。

サイトを作り直す。

広告を差し替える。

動画を作り直す。

印刷物を廃棄する。

場合によっては、取引先や顧客への対応まで必要になる。

「契約書の著作権条項をちゃんと確認していなかった」ことが、後になって想像以上のコストにつながる可能性があります。

もちろん、著作権に関する契約上の取り決めが曖昧だからといって、必ずこうしたトラブルになるわけではありません。

しかし、トラブルになったときに初めて、「あの数行をちゃんと決めておけばよかった」と気づいても、後から簡単にやり直せないことがあります。


契約したときには、著作権条項なんて気にならない


著作権条項は、契約書の中でも比較的「地味」に見える条項かもしれません。

営業担当者からすれば、「いつもの契約書ですよね」

制作会社からすれば、「いつもの著作権条項です」

という程度で、そのまま契約が締結されることもあるでしょう。

そして、取引が順調に進めば、実際にその条項を読み返すこともありません。

だからこそ、見落としやすい。

著作権条項が本当に重要になるのは、何か問題が起きたときです。

「この成果物、自由に使っていいんだよね?」

「別の会社に修正してもらっていいんだよね?」

「サービス終了後も使っていいんだよね?」

「第三者から権利侵害を主張されたら、誰が対応するの?」

そんな疑問が出てきたときに、初めて契約書の数行が大きな意味を持つことになります。


「納品されたから自社のもの」で済ませない


業務委託契約では、

「成果物が納品された」

ことと、

「その成果物を発注者が自由に利用できる」

ことを、同じものとして考えない方が安全です。

著作権について、

  • 誰が権利を持つのか

  • 譲渡するのか

  • どのように利用できるのか

  • 改変や二次利用はできるのか

  • 著作者人格権をどうするのか

  • 第三者の権利侵害があった場合、誰が責任を負うのか

こうした点を、実際の取引内容に合わせて契約書で整理しておくことが重要です。


契約締結時には、著作権条項はただの数行にしか見えないかもしれません。

でも、その数行が、数年後に

「その成果物を使い続けられるのか」

を左右することがあります。

だからこそ、著作権条項、ちゃんと確認しておきましょう。

「納品されたから大丈夫」

「お金を払ったから大丈夫」

ではなく、

「契約書上、本当にその使い方ができるのか?」

ここまで確認しておくことをおすすめします。



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